高尚ぶる、

小説も書いてるから読んでね ピース

異星人

 

 

ドアスコープを覗くと、麦わら帽子を被った中年の女のひとが、ほうきで掃き掃除をしているのが見えた。大家さんだろうか。

昨日、はじめてスーパーでおはぎを買った。さいきん観る映画観る映画、おはぎが出てきていて 美味しそうだったから。

父方の祖父母は家を訪ねるたびにいつもお菓子を用意してくれていたな、と思う。ケーキ、煎餅、葛切り、羊羹。祖父が甘党で、いつもなにかしらを勧めては「食べてるときは静かじゃな」と方言混じりにわたしの背中をバンバン叩いていた。幼少期の断片的な思い出はそれくらい。マシュマロマンみたいに膨張した自分の腕が、そこはかとなく恐ろしかったのを覚えている。太ると、愛されなくなる。と思っているけれど まあ太っていなくても愛されないときは愛されない。仕方のないことだった。

文字と自分を切り離したいけれど、好きなひとには自分のことを話しすぎてしまう。いつか、「作品を目の前で読まれるのって、はずかしくない? 」と言われてよく分からずにこんがらがった。くろい糸が、絡まるような感覚がした。はずかしいんだ、これ。

肌に当たるエアコンの風がするどい。設定温度が22度になっていてイラッとした。自分の部屋の適温を知っているから、みんながごちゃ混ぜになる場所で こういう差異みたいなものがみえるのが嫌だったんだと思う。他にも違いなんて、いくらでもあったのに。

ねえ。夏がおわるよ、夏が。わすれてるでしょ。中途半端な約束は、信じないほうがしあわせに生きられるってこと。気付いてしまったから、たぶんもう たのしいだけの夏は わたしには来ないんだと思う。

 

 

隣の部屋のひとが、さいきん玄関口で揉めている。父親らしき男のひとと大声を出し合っている。朝っぱらから、と思いながらドアに近付いたけれど、もう9時過ぎだった。「うお、」と声がする。続いて、地面を踏む音。ダンダンドダ、コンクリートだから振動まで伝わるみたいだった。昼過ぎにドアを開けると、蝉の死骸が粉々になっていた。七日のいのち。らしいが。最期に見たのは、朝っぱらから玄関口で大声を出す男の靴の裏だったか。なんだかいやに、薄暗い気分になるが 雨が上がった空は明るかった。わたしはわすれないけど。蝉、おまえが生きたこと。

わたしは、わすれないけど。

 

 

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