永遠の男の子
『あなたは永遠の男の子でいい』とYUKIが歌う。
小学生のころ、好きだった男の子のことを思い出した。
目が大きくて、睫毛が長くて 薄っぺらい男の子だった。走ると風が舞うみたいに早くて、足が速いと小学生はモテると言うけれど たぶん、足が遅くても彼のことを好きになっていたと思う。理科の実験のアルコールランプみたいにゆらゆらと、頼りなく揺れている。
なんでこんなことをいま思い出すのか、知らない。修学旅行に行く新幹線のなか、座席を挟んで会話した。修学旅行が終わると転校してしまうことを知っていたけれど、「おぼえていてね」なんてことはたぶん言えなかったと思う。
小学校のことなんて殆どもう覚えていないけれど、なぜだか好きだった男の子のことばかりは覚えている。
やけに長くて最後にはひとりになる通学路のこと、友達と喧嘩した公園。5階の窓から見下ろす校庭、渡り廊下の頑丈さ。なんだってあったのに。
彼が「俺、2回修学旅行に行けるんだ」と笑っていたことを、昨日の夜中に思い出した。元気だろうか。
夜、風呂上がりの彼とばったり会って、濡れた前髪がキラキラと光っていたのを覚えている。「ーにだけ見せてあげる」と何故か隠しながら見せてくれた寝癖直しスプレー。かわいくって、かっこよくって、だいすきだった。
転校する前に手紙を渡せたか渡せなかったかは覚えていないけれど、そんなことはどっちだって良かったのかもしれない。忘れられない男の子。現在のSNSとかは、見つけたくないな。
いまわたしが好きな男も、いつか忘れられない男の子になるのだろうか。
忘れてしまうほど、離れてゆくのだろうか。
そんなことを思いながら天井を睨むと、また彼らの幻影がちらつく。煙草でも吸えば落ち着くのか。
ねむれないよるを乗り越えなくても明日はやってくるし、寂しいものだね。きみも、あなたも。このよるを明かせますように。おやすみなさい。
@issu___i アンダーバーはみっつ
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